1.釈尊50年の説法は人々(衆生)の救済にあった。
人々は四苦八苦の人生に呻吟するかと思えば、安易に享楽の世界に溺れ、折角この世に生を受けても、この世に尊き境界があることに気づかないまま短き人生を儚く過ごす。この儚き無常の世界をしっかりと悟り、向き合うように導くことにより、その先にある仏の悟りの尊き世界があることを示して、苦を克服し大安心のもとに生きる方法を50年の間教えられたが、後半の八年間に説かれた法華経において、聴く者の性格や能力、功徳によらず、釈尊の悟りのままを説かれたと言われます。故に法華経は随自意の教えと言います。

42年間の方便の教えについて
釈尊は19才で出家され30才の時に成道(悟りを開く)されました。
成道の後、80才で御涅槃(亡くなる)されるまでの50年間、仏法の説法をされました。
最初は華厳経という、法華経よりも少し易しい教えを説きましたが、教えを聞いた人たちの多くは、真の理解はできませんでした。このため、初歩的な戒律(例えば、嘘をついてはいけない、盗んではいけない等)を初めとした初歩的教えの阿含教を説かれました。そこでは修行者自身の解脱と悟りを重点に説かれたためか、仏の真意を勘違いして自身の解脱ばかりに執着する者が多くいたため、彼岸までの自分しか乗れない小さな乗り物という意味で後に小乗教と言われるようになりました。その後、方等・般若と聴く者の性格や能力、功徳に合わせて次第に他の衆生を救うことを目指す所謂大乗の教えを説かれたのです。この間は42年間の説法でしたが、これは、法華経という大きな塔を建てるためのいわば準備の教え、つまり足場のような教えだったのです。これを方便の教え(仮の教という意味で権教)と言います。釈尊の御本懐の教えではなかったのです。この42年の間に説かれた教えには奈良仏教・浄土宗・真言宗・禅宗等の法華経以外のすべての教えが方便・仮の教であるのです。
八年間の教え法華経
釈尊は、いよいよ法華経を説くにあたって、いままでの42年間の教えは真実ではないと無量義経という経典で宣言されています。この経には、「四二年未顕真実」とはっきりと明示されています。更には、それから八年の間、法華経を説かれましたが、その法華經の初め「方便品」には「正直捨方便」とありますが、これは42年間の方便、仮の教えは「正直捨方便」、つまり仏の言われたとおりに捨てなさいと言われています。
そして、この法華経には二つの大事なことが説かれていると、日蓮聖人は開目抄という御書で示されています。
- ① 二乗成仏(作仏)(小乗教の聖者の成仏)
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42年間の方便の教えでは永久に成仏出来ないと嫌われてきた声聞乘と縁覚乘の二乗は小乗の教えに偏し、自分が成仏出来ればよいと自己の解脱救済にのみ執着してきた人々でしたので、その者達は悟りを得たように見えて成仏から最も遠いところにいる人々でした。
しかし、法華経に来たって始めて、一念三千の法門によりどの様な者にも仏に成る可能性即ち仏性が存在するという原理を説き明かされて、このような頑迷な二乗も仏に成り得るのだとはじめて示されたからなのです。これにより、二乗に限らず女人も、愚者も、悪人も全ての者が成仏できる理を法華経においてはじめて説き明かされたのです。この事がまず他の経典に比べ法華経が有難い理由だと日蓮聖人は強調されたのです。 - ② 釈尊の本地開顕(お釈迦様の真実の姿を顕わされた)
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釈尊が説法を初めてから法華経の前半に至るまで、人々は釈尊をマガダ国の王子が修行を積んで悟られたものと思っていました。
所が、法華経の後半の寿量品でご自分が「久遠実成の本仏」であると告げられたのです。初めのない初めから、終わりのない終わりまで、つまり永遠の仏であると言われたのです。過去・現在・未来に渡って人々を救済し続けていると述べられたのです。
※法華經は一部八巻二十八品からなっている。
日蓮聖人と末法の衆生救済
釈尊の末法における衆生救済の願いは日蓮聖人に命じられました。
釈尊は滅後(亡くなった後)2000年を過ぎると末法と言って世悪人悪、つまり思想宗教が乱れ天変地異が盛んに起こって人々が苦しみ、また、人々も徳のない不孝な人達が生まれる悪い世の中が来る。このような人達は釈尊の本懐の教えであり、経力の強い最勝経である法華経でなければ救うことが出来ないといわれ、上行菩薩を筆頭に4人の地涌の菩薩とその眷属衆に法華経を授けられました。
日蓮聖人は、この上行菩薩の再誕として鎌倉時代に生まれ、数々の法難(法華経を弘めるために遭われた難)を受け、それを乗り越えて法華経を弘められました。また、末法の人々のために、仏道修行の方法として三大秘法という修行法を示され、さらにその中でも最も重要な題目口唱を一大秘法として私達に残されたのです。
(三大秘法)
- ① 本門の本尊
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私達が礼拝し信仰の対象とする御曼荼羅
- ② 本門の戒壇
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日蓮聖人の本門戒壇は、末法における本門法華経弘通の基点・象徴であり、且つ本仏在住の浄土そのものとして、雑乱勧請なく御本尊たる御曼荼羅をお祀りする処を戒壇といいます。
- ③ 本門の題目
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本門八品(本門の中でも従地涌出品第十五以下の如来寿量品、分別功徳品、随喜功徳品、法師功徳品、常不軽菩薩品、如来神力品、嘱累品の八品をいう)において、釈尊から授与された上行菩薩日蓮聖人が所伝(伝えるところ)の題目=南無妙法蓮華経
(一大秘法)
略して一秘ともいい、教主釈尊が末代の衆生救済のために留め置かれた南無妙法蓮華経こそが最も大事なものであると示されています。





